休職そして復職・転職について

休職そして復職・転職について

2021年12月20日 改定

患者さまへ

受診される患者さまが会社や大学および専門学校などで、様々な程度のハラスメント(精神的・肉体的な圧力・不安・緊張・恐怖・苦痛・屈辱を受けることなど)を訴え、退職・休職を希望される場合があります。小生も医師、一人の社会人として同じような苦境を経験してきました。
受診された患者さまに“早急に結論を出さずに、より上級の上司に相談され対象となる上司と関わらないような人事面の配慮をお願いして頂き、抗うつ薬以外の速効性があり、安全で副作用の少ないお薬(心が穏やかになり、前向きな気持ちになれる)の併用で数日から1~2週間、効果を見ませんか?”など励ましの思いで、お話をする場合がありました。
これに対して、辛くてギリギリの思いで受診したのに、話をよく聞いてくれずに、説教されたり、高圧的態度で怒鳴られたりしたとのご批判もお受け致しました。
受診された患者さまの訴えやご希望を最優先として、これからはより真摯に受け止め、お話を深くお伺いします。望まれるような診断書なども直ぐに記載した上で、これからの御本人のご希望に沿い、診療も可能であれば、継続させて頂きたいと存じます。
今後もより質の高い、患者さまのお気持ちを最優先にした安全な精神科医療を心掛けて参ります。

休職を希望される患者さまの受診の経緯

  • ハラスメントなどを受け、不安や緊張や恐怖などから、自律神経機能不全に到り、出社しようとすると、吐き気や下痢、頭痛あるいは動悸や息苦しさなどのパニック発作様症状を感じ、御本人から受診される場合:直ぐには受診されずに10日から2~3週間、欠勤されてから受診される患者さまが多いようです。
  • 上司から仕事での集中力や判断力の低下や欠勤などを心配され、厚生労働省のメンタルヘルスの観点から診断書の提出を求められ、受診される場合
  • 会社の産業医先生から就労状況やストレスチェックの結果などの紹介状を持参し、受診される場合

休職を希望される患者さまの症状および状態

以前から勤務上の症状の早期には急性ストレス反応(不眠、頭痛、吐き気、嘔吐、下痢、動悸、息苦しさ、めまい、耳鳴りなど他にも様々な症状)が指摘されています。その後には過重労働によるストレス性抑うつ状態(集中力・判断力の低下、意欲の低下、日常的な抑うつ気分、興味・喜びの喪失、不眠など)に到る事象が多くなりつつ有ることが指摘されていました。
その経過として、産業医先生の危機介入のテーマとして、“自殺・失踪・自傷他害行動・精神的混乱・錯乱・パニック発作・失神・記憶喪失・急性期精神障害などに到る”危険を防止するために日本精神科産業医協会や日本精神神経学会などから、厚生労働省への労働衛生安全への緊急要望が継続されていました。
厚生労働省も2010年・平成22年“自殺・うつ病等対策プロジェクチームの設置について”から漸く、2015年・平成27年に到りストレスチェック制度を従業員50人以上の事業所に義務づけ、メンタルヘルス不調を未然に防止するために制定しました。しかし現状では、受診される患者さまの多くの方が、厚生労働省の勧告を受け容れない会社の不法な過重労働や日勤・深夜勤などの過酷な勤務体系の方針に精神的・身体的にも悩み疲労されておられます。

復職か転職かの患者さまの経過

女性の患者さま

看護師・客室乗務員(C.A)・空港のグランドホステス・金融機関の窓口受け付け・コ-ルセンタ-の担当・営業担当など

医師としての助言:
上記職業で多いと思われるのは接遇(お客さまの過剰な要求)と女性が殆どの職場環境であり、その環境なりのハラスメントが働き、難しく感じていると思われます。
看護師・窓口受け付けの方は休職後、他病院・他金融機関への再就職へと順調に転職される場合が多いようです。その職業に対する夢や使命感を感じます。
 コールセンタ-担当や営業担当の方はお客さまと接しない職種へ転身され、生き生きと復活されます。顧客さまからの直接の過剰な要求は中々対応し難いと思われます。
 客室乗務員(C.A)・空港のグランドホステスの方は再受診される方が殆ど居られないので、他院を受診されたのか、他職業への転身されたのか、その望まれる思いも推定困難です。

男性の患者さま

新入社あるいは入社後、数ヶ月でまだ、あるいは部署異動、転職後の仕事の勤務内容がスム-ズに覚えられずに、上司から叱責を受け受診されます。
新人の方は休職そして転職のための診断書を望まれます。当院では、この初診時に話をよく聞いてくれずに、説教されたり、高圧的態度で怒鳴られたりしたとのご批判を受けて、お話をより深く真摯にお伺いするように努めて、直ぐに診断書を記載するために復職の可能性も残した1~2ヶ月間か、あるいは転職を考慮した3ヶ月間かを御本人の御希望を再度確認させて頂き記載し、御本人が望まれるならば、それ以降の診療でも継続して支援して参りたいと存じます。

部署異動あるいは転職後の方は自身の社内で置かれている立場をよくご存じです。このため、抗うつ薬以外のお薬で速効性があり、安全で副作用の少ないお薬(心が穏やかになり、前向きな気持ちになれる)を併用しながら、不安や集中力の低下を何とか維持して頂くよりも、1~2ヶ月間休職され、次項に詳細に述べます休職時の規則正しい日常生活や安全な通勤練習を4週間以上、続けられることが望まれます。これにより1~2ヶ月で意欲も向上し、就労復帰時の不安や緊張などは和らぎ支障なく充分に就労される患者さまが多く居られます。

休職中に復職か転職かなどに意欲を向上させる準備

患者さまが思われているよりも、過重労働や困難な対人関係コミュニケ―ションが負担となり、休職して自宅に居ると、御本人の体力が低下しているため、御本人の予想以上に気力や意欲が湧かず、自宅で一日中、外出せず、寝込んだりの生活や昼夜逆転の生活を過ごしたりする傾向が見られます。これは休職の診断書を記載した主治医としては、 予測されていることなので、患者さまとの信頼を得て抗うつ薬以外の速効性があり、安全で副作用の少ないお薬(心が穏やかになり、前向きな気持ちになれる)を併用しながら、復職や転職などの準備をします。

目標としては:
A: 体力を回復する行動的な日常生活(月曜日~金曜日)を取り入れます。ジョギングなどは足関節や膝関節を痛める危険性が有りますので、足底部に負担の少ないウオーキング・シューズを購入されて下さい。コンクリートやアスファルト以外のなるべく土の道を、朝6時頃から15分くらい散歩して、1kmくらいで目指すカフェなどに着きます。
モーニング・セットやコーヒーなどで休憩されたらゆっくり帰ります。
そして日暮れ前にはカフェや軽食店へ同じ様に15分くらい散歩して、ゆっくりされて帰ります。
これにより緑の香りや風などを感じ、心は穏やかになり、少しずつ不安も和らいで来ます。
結果的に一日4~5kmくらい歩くことになり、予想以上に体力は回復されてきます。
そして体力の向上から気力の向上へとつながって行きます。
土曜日・日曜日はゆっくり、休まれて下さい。

B: ウオーキングは朝、夕方されても宜しいけれども、お昼などはランチなどを挟んで、図書館で写真集や漫画などの普段の仕事以外の楽しみでリラックスし、時には映画や美術館などで心を癒やして下さい。気持ちは不安や緊張が和らぎ、周りの人々も気にならなくなります。大切なことは月曜日から金曜日まで以下の通勤練習も含めて朝6時頃から夕方5時頃まで外で過ごす習慣を継続することです。 これが達成されれば、自信につながり、意欲の向上へとつながって行くと思われます。
以上に述べました規則的な日常生活は、転職を望まれる方にも、日々、積極的に就職活動が出来るようになり、定期的に外来受診して頂くことで、お困りのことのご相談や意欲の向上などにお役に立てるように最善を尽くします。

C: 今までと同様の出社時間に合わせた電車での通勤練習(月曜日~金曜日)(最初は昼の空いた電車から始め、不安が和らいで来たら、上記に移行します)
この練習も土曜日・日曜日はゆっくり休んで下さい。
直ぐに出来そうで予想より困難な行動です。就労復帰には欠かせない自身から行い得る実践行動からの認知行動療法による精神状態の安定化とも評価されると思われます。
通勤練習の必要性を痛感致しましたのは、休職後、“もう大丈夫です”と述べられた男性が通勤電車の駅へ向かう途中、漠然とした不安で帰宅しまった。通勤電車に乗ろうとスーツのスラックスを履こうとした瞬間“ヘナヘナ”としゃがみこんでしまった。通勤電車に乗れたのに吐き気で途中下車してしまった。など通勤電車に乗るという行動自体を始めてから“私が復職したら会社の人達はどう思うだろうか?また、復職前の状態に戻ってしまったかも知れない?”などの強い不安を訴えられる患者さまがいらっしゃいました。このため、10数年前より、患者さまにお願いして、休職中に上記A.B.C項目を少なくとも4週間以上日常生活に取り入れて頂きました。その結果、休職の診断書に記載致しました休職期間より早期に不安などが消失し、復職への意欲の向上される患者さまも多くなり、医師としても一層の努力が必要であることを痛感致しました。
これからも復職される会社の産業医先生とも緊密に連絡し合い、患者さま一人一人に合った復職プログラムを最優先に患者さまの精神や身体の復活に全力を尽くして参ります。

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