統合失調症と急性一過性精神病性障害

統合失調症

主たる症状

早期あるいは前駆症状(漠とした緊迫困惑気分・自生思考・被注察感)の段階で薬物治療を開始すれば早期に完全寛解にいたるとの報告もされています。

統合失調症の内、クリニックで診察・治療する症例は主に妄想型統合失調症です。

1つ、またはそれ以上の妄想(被害妄想・被害関係妄想・高貴な生まれという妄想・特別な使命があるという妄想・体が変わってしまうという妄想・嫉妬妄想)・頻繁に脅したり命令したりする幻聴・まとまりのない会または話・まとまりのない行動・平板化したまたは不適切な感情。

治療方法

クロールプロマジンから始まり様々な抗精神病薬が開発され適用されていますが、それぞれの薬の特徴がありますが、また副作用もあります。それぞれの症状に合った処方により、ある程度、軽快する場合もあります。辛抱強くその患者さまに合ったお薬を調整して行くことが大切です。

ただ、幻聴、特に覚醒剤中毒による幻聴には中々、どのお薬も効果が不十分で治療に難渋します。
次の項目で予後良好・不良な因子について記載致します。

発病原因および治療経過

ストレスに脆弱な個人的な素因・遺伝性素因・両親および家族との歪んだ関係など様々な研究が報告されていますが、特定出来る原因は未だ不明な点も多く残されています。

予後良好な因子:

遅い発症年齢・急性発症・社会的、性的、職業的に良好な病前の生活歴・気分障害症状(特にうつ病性障害)・既婚・気分障害の家族歴・良好な支援組織・陽性症状

予後不良な因子:

早い発症年齢・潜行性の発症・社会的、性的、職業的に乏しい病前の生活歴・引きこもり、自閉的な行動・未婚、離婚、または死別・統合失調症の家族歴・乏しい支援組織・陰性症状・周産期外傷の病歴・3年間寛解なし・多数回の再発・暴行歴

急性一過性精神病性障害

主たる症状

統合失調症と同様な症状、妄想(被害妄想など)・幻覚(幻聴)・理解しにくいまとまりのない会話・精神運動興奮から起こる錯乱状態、またはこれらの症状の組み合わせが、急性に発症したものであることです。精神病症状の初発から障害が完成されるまでの期間は、2週間を超えないことです。

この障害の急性発症が急性ストレス因子(最初に精神病症状が発現してくる前の2週間以内に起こっていること)をともなう場合とともなわない場合があることも重要な治療経過に影響します。

治療方法

統合失調症に準じ抗精神病薬に依る薬物治療を主体とします。外来で治療可能な場合もあれば、精神運動興奮から精神的錯乱状態や情動の爆発性から暴力・衝動行為をともなう場合は入院・措置入院から開始する必要があります。

発病原因および治療経過

急性発症は、治療に対し良好な経過と関連しているという統計が報告されており、発症が突発性であればあるほど、経過もより良好であると考えられています。したがって、突発性発症(48時間以内)に該当する場合にはより詳しく関連する急性ストレス因子なを特定することが望ましいと思われます。

しかしながら、急性一過性精神病性障害のかなりの症例ではストレス因子とは関連なく発症するという報告も限られてはいるがあるので、ストレス因子については、その有無を正確に把握することが重要です。
典型的なストレス因子は死別・配偶者を失うこと・職を不意に失うこと・結婚・テロおよび暴力による心理的外傷などと推定されます。
長期間続く苦悩や困難は、この場合のストレス因子とは思われません。

通常は2~3ヵ月以内、しばしば数週間あるいは数日以内に薬物治療により完全に回復し、これらの障害に罹患した患者さまの中で持続的に能力の低下した状態に陥る症例は極めてわずかです。
残念なことに、早急な回復を望めないわずかな患者さまを早期に予見することは、現在のところ不可能です。

48時間以内および2週間以内という診断基準についての重要な点は、これらの障害が最も重症になった時間ではなく、精神病性の症状が明らかになり、少なくとも日常生活や仕事上の場面に何らかの支障が出てきた時間として考えられていることです。
いずれの場合も、その後に障害の極期へと増悪しますが、通常患者さま自身か家族あるいは会社の方と何らかの援助機関や医療機関と接触をもつようになるという意味で、症状や障害が治療に適切な時期までに明らかになれば安全な治療の繋がると考えられています。

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