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    子育て不安とマタ-ニティ・ブル―ズおよび産褥期精神障害(産後うつ病も含む)

    子育て不安

     

    子育て不安は、夫の有無にかかわらず、母親が自分の乳幼児を育てる場合に情緒不安定となり、易怒性、感情失禁、不安、抑うつ気分、衝動性など経験と自信のなさからくる漠然とした不安定な精神的状態の総称といわれています。

     

    概要

     

    母親が乳幼児の育児に際して自信の無さや不安(ストレス)や困惑などを抱き、乳幼児への否定的な感情といった情緒・感情の変化から、衝動的な攻撃を伴うものまで、かなりの幅があります。これらは「育児ストレス」や「育児ノイローゼ」とも表現されますが、そのような病的な状態に至らなくても、もっと漠然とした不安や困惑なども子育て不安と思われます。

     

    ただし、乳幼児の育児について、育児の事細かい方法や乳幼児の病気などで、一時的・瞬間的に不安や戸惑いを感じるようなものは、どの母親も経験することなので、子育て不安には含みません。子育て不安とされるものは、ストレスと感じる感情失禁、不安や困惑、抑うつ気分、衝動性が継続的に続くものとされています。また、出産の直後や産後2,3日から3週間くらいの時期、母親が情緒的に不安定になり涙もろくなったりする場合は、「マタ-ニティ・ブル―ズ」といわれ、子育て不安とは区別します。ただし、これが、そのまま改善しない場合、産後うつ病に移行することもあるといわれています。

     

    夫が子育てに極めて非協力的な場合や父親が居ない場合(離婚、シングル・マザー)には、母親が子育て不安から産後うつ病になりやすいことも指摘されています。

     

    背景・原因

     

    ●実母や義母と共に育児する、あるいは実母や義母の助言・援助の元に育児することが期待出来ない場合はとても多いです。

    ●望まない妊娠などで乳幼児に接する感情自体に嫌悪感、不快感 を抱いてる場合です。

    ●育児の経験不足 – 乳幼児の疾患、発達に関しての実母や義母などからの情報が無いために、育児に対する知識不足、経験不足になってしまう。それに反して、自分の好みのためには、幼児をペット化し、幼児のブランド物の服や靴には、おおきな興味をもちます。ただし、幼児の健康にはあまり関心がもてない場合が多いです。

    ●育児雑誌などから何ヶ月でどんな行動とあるのに対して、一喜一憂し、他の家庭の子の発達と比較したりします。育児雑誌、他の家庭との比較に熱心です。

    ●育児に縛られて自分の時間が持てないために育児から受ける被害妄想、育児での被害者意識 – 幼児の為、自分の時間が拘束、束縛されていると、幼児を逆恨みする場合などには、衝動的になると、虐待(児童虐待)にも、及ぶ危険性があります。

     

    対策および治療

     

    ● 医療機関を出来れば夫(あるいは元・夫)と一緒に受診されて、夫の育児参加の必要性を医師によく説明してもらい、情緒の不安定さを少しでも和らげ、育児に対する孤立感を改善します。
    ● ご本人の両親あるいは夫の両親の協力が得られる場合には出来るだけ一時的にでも育児を一緒に過ごし、助言や援助を受けながら精神的な安定化を取り戻します。
    ● それでも情緒的不安定さや衝動性、抑うつ気分が改善されない場合には、抗うつ剤などの強いお薬以外の情緒的不安定さや衝動性、抑うつ気分を安定化させる、有効で副作用の少ないお薬を処方致します。

     

    ただし、乳児の場合は母乳から人工乳への切り替えが必要となります。なぜなら、お薬が母乳から乳児への摂取に到り、乳児に副作用を及ぼす危険性があるからです。

     

     

    産褥期精神障害(産後うつ病も含む)

     

    概要および対処・治療

     

    出産後には多様な精神的変調がみられます。出産後1週間以内に生じやすいマタ-ニティ・ブル-ズは日本では約30%の女性にみられます。涙もろさや気分の不安定さが生じますが自然に軽快する場合も多いです。

     

    産褥期精神障害は困惑、焦燥、幻覚や妄想などが出産後、約2週間以内に急に生じる場合があります。躁状態やうつの気分を伴うことも多いです。産褥期精神障害では速やかに薬物療法(お薬の治療)を行うことも必要です。新生児に対する妄想を伴う場合には、新生児の安全を確保し、薬物治療により症状軽快後には育児援助も行われています。

     

    産後うつ病は、出産後早期から数ヶ月以内に発症することが多いです。母親の約10%はうつ状態を経験しますが、正確に診断されていない場合も多いと思われます。育児援助やカウンセリングなども行いながら、必要な場合は副作用の少ない薬物療法も効果的と思われます。

     

    考察

     

    自治体によっては、公立保育園などで電話でも育児相談に応じるようなシステムにしているところも多いようです。また電話相談で頻繁にある質問に対しては、質問と様々な対応の仕方についてのパンフレットを作成し、市役所の担当部署や公立保育園の窓口で配布するといったことも実施されています。また直接に保健所や児童相談所、医療機関に、ご相談されるのも、とても有効と思われます。

     

    当院では子育て不安、マタ-ニティ・ブル-ズ、産後うつ病の治療にも積極的に取り組んでいますので、お気軽に、ご相談ください。

     

    当院では初めての方には、電話でご予約を頂き、ゆっくりと時間をかけて、お話をお伺いいたします。

    再診(2回目)からは予約無しで受診出来ますので、スタッフ一同お待ちしております。

     

    2015.01.29

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    デイケア プログラム紹介 (やわらか脳トレ)

    川崎メンタルクリニック デイケア ブログです。

     

    今回は “やわらか脳トレ” についてご紹介します。

     

    このプログラムの目的は以下の2つです。
    ①自分の考え方のクセに気付くこと
    ②その気付いた考え方のクセを修正、コントロールすること

     

    例えば
    何か悪いことが自分の身に起こった時

    ・自分のせいにし過ぎるクセがある人は

      自信を無くしてしまうかもしれません

    ・他人や状況のせいにし過ぎるクセがある人は

      人間関係などに問題が起こるかもしれません

     

    その凝り固まった考え方のクセを

     

    やわらかく”することで

    感じている苦痛(自信が無い、人間関係が苦手、思い込みが激しいなど)が減るように

     

    脳トレ”をするプログラムです。

     

    難しく書きましたが、実際は

     

    少人数のグループで

    和気あいあいと

    頭を使うゲーム

     

    をこなしていくプログラムです。(講義のような時間も少しあります)

     

    参加されている利用者の方からは
    「楽しい。」

    「勉強になった。」

    「頭がすっきりする。」

    「難しい。」等のご感想を頂いています。

     

    就労を目指している方、病気の理解を深めたい方から特に人気のあるプログラムです。

    2015.01.24

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    対人恐怖症と強迫性障害

    症状:
    対人恐怖症と強迫性障害はどちらも正常な日常生活習慣や職業上の機能、社会的活動、他人との関係などを大いに妨げています。

     

    対人恐怖症:強い不安や緊張のために、他人に軽蔑されるのでは無いか、他人に不快な感じを与え、いやがられるのではないか、また、それらを想像しただけでパニックに陥りそうになり、対人関係からできるだけ身を退こうとして、引きこもってしまいます。

     

    強迫性障害:してはならないことをしてしまった、あるいは、してしまうのではないかという不安・疑惑を感じて質問や確認を繰り返します。(強迫観念)
    自分や自分の生活圏が汚れや細菌などで汚染されているのではないかという強迫観念から手を何度も洗う、電気・ガス・戸締まり(鍵)・財布などを何度も確認して、出かけられなくなります。会社では会議・電話・書類・面談などを何度も確認して、対人関係に支障をきたしてしまいます。(強迫行為) 

     

    発症因子:
    セロトニン調節の失調があるという仮説が支持されてきています。

     

    併存合併疾患:

    醜形恐怖、自己臭恐怖、大うつ病性障害、トゥレット障害(チック)

    対人恐怖症では統合失調症の前駆症状(発症前症状:漠とした緊迫困惑気分)の場合もあり得ます。

     

    鑑別診断:

    統合失調症(強迫性障害では患者さまが障害を認識し、洞察できている)、強迫性人格障害。

     

    経過と予後
    予後良好な指標としては、薬物治療や行動療法により日常生活習慣や社会職業的適応が改善されることや発症誘因が明瞭に特定できることなどです。

     

    治療:
    薬物療法:一般的にはセロトニン作動性薬剤 SSRI(デプロメ-ル、ルボックス、パキシル、ジェイゾロフト)、アナフラニ-ル などです。当院での薬物療法はなるべく副作用の少ない薬剤を処方し、行動療法と併用して治療にあたります。

     

    行動療法:対人恐怖症の場合は、薬物療法と併用し、回避しないで、少しずつ外出し、行動範囲を広げ、目標は対人関係を構築していくことです。デイ・ケア利用も効果的と思われます。

     

    例えば集中治療室の看護師さんは医療過誤に到らないように、その日の循環器・呼吸器管理などの場合、手の甲にボ-ルペンで5から6項目くらい、点滴、人工呼吸器点検、循環器薬剤注入など重要項目を簡潔に記載し完了した項目に横線を引きいつでも手の甲を見れば完了した項目を確実に確認できるようにしています。
    強迫性障害の場合は、看護師さんと同じように自宅では、電気・ガス・戸締まり(鍵)・財布など、会社では会議・電話・書類・面談などを手の甲に記載し終了したものに横線をして、手を見ればいつでも再確認できるようにしてみてください。

    2014.11.27

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    衝動行為に悩まれる患者様へのお願い

    他の人達と接することを怖れないで、閉じこもらないで、散歩したり、友だちと遊びに行ったり、ファッションのお買い物したり、旅もしたりと行動しながら、徐々にストレスを発散して、自分自身の自信を取り戻してくださいね。
      

    過去(育った家庭環境、家族から受けた精神的・身体的虐待や異性との不幸な関係)他人(学校や社会で出会った人達)について恨むのは当然ですけれど、なるべく、心から離れるようにしてくださいね。

     

    何故なら、過去と他人は変えられないし、精神科医も心療内科医も貴方が心を開かない限りお薬だけでは治せないからです。

     

    貴方を変えられるのは貴方自身だけです。貴方の意志と勇気を持って学校でもアルバイトでも会社でも通学・通勤を行動し、実行すれば貴方が変わり、過去も他人も少しずつ心から薄らいでいきます。そうなれば、ストレスが和らぎ、衝動性・衝動行為も少しずつ自然に収まり、人格(パ-ソナリティ-)も成長して、素敵な貴方を取り戻せますよ。

     

    衝動性・衝動行為とは:
    例えば、不登校、欠勤、自傷他害行為(過食・嘔吐、リスト・カット、自分を殴打、壁に頭をぶつける、同居する異性と殴り合う、買い物依存、アルコ-ル・薬物大量服用、繰り返す不幸な異性関係、ギャンブル依存、覚醒剤中毒)など・・・その結果パニック発作を発症したり、希死念慮から自殺に到る場合も報告されています。

    2014.11.20

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    うつ病・うつ状態で休職される患者さまに大切なこと

    うつ病・うつ状態で休職される患者さまに大切なこと

    最近の多くの会社では、うつ病・うつ状態で休職するのは、通常、診断書に「定期的外来加療ならびに約1ヶ月から3ヶ月の休職」が必要と判断致します。との文書で休職、出来る場合が多いです。
    最初の1~2週間は温泉に行かれても、故郷に帰られて厳しい会社の現場を離れてゆっくりされるのも宜しいでしょう。
    さて、それからが患者さまにも主治医にとっても復職へのチャレンジです。
    会社では、特に公務員、教職の方は毎月一回しか開かれない復職審査会議で十数人の産業医、人事担当 などの復職審査を合格しなければ、翌月の審査会議に先送りされます。
    さらに産業医によってはリワ-ク・デイケアに3ヶ月通所しないと復職出来ないと主張される先生もいらっしゃいます。(リワ-クとは復職:Return to Work)
    患者さまの中には初診から1,2回受診されて、3ヶ月ぶりに受診されて、故郷でも治療を受けられずに復職可能の診断書と傷病手当金の書類を請求される方がいらっしゃいます。3ヶ月もご本人の症状や状態も分からないので、復職可能かどうかも、受診されてない月に就労困難であったかも分かりませんので、どちらもお断りせざるを得ません。
    何故なら、症状が安定して過ごせられたのは故郷だからであって、東京や川崎の職場でうつ状態になられたので、治療も受けずにそのまま復職されたら、また受診時の状態が再燃してしまう可能性が大きいからです。

    うつ状態で休職される場合、自宅に引きこもっていると、“私は弱い人間だ”“休んでいる私を会社の人はどう思っているんだろう”“私が居なくても会社はうまくいっている。私は会社に必要のない人間だ”などとマイナス思考に陥り生活リズムも不規則になりがちです。

    だからこそ、休職された場合には気力・体力ともに低下していることが多いので、日常生活を規則的に積み重ねて送ることが大切です。早寝・早起きの習慣を身に付け、通勤練習を毎日欠かさず、出社時間に出社時と同様の電車・バスに乗り、会社の最寄り駅からUタ-ンをして午前・午後に分けて散歩、ウォ-キング、ジョギング、スポ-ツ・ジム など少しずつ幅を広げ、気力・体力を養い、図書館、映画、美術館などでゆったりと過ごし穏やかな思いを持ち、夕方、自宅に帰るという毎日を月曜日から金曜日まで続けます。たまには温泉などでリラックスの日々も取り入れてください。土曜日・日曜日は好きな趣味などにあててください。通勤練習はとても大切な復職に向けての訓練です。
    気力・体力ともに回復しても、いざ復職の日を迎えると、洋服を着た途端、駅に行く途中で色々な思いがよぎり、不安が高まり自宅に戻り出勤出来ない方がとても多いからです。普段から復職時の不安を無くすためには通勤練習がとても有効です。

    もちろん、毎週一回の外来定期受診をされて、うつ状態の改善度をお話して、今後の復職へのご相談も致しましょう。3ヶ月以内に復職出来た方は著明な改善です。
    それでも再発防止のため一年半は治療を続けましょう。復職が少々遅れても、しっかりと治療を受けて治して復職を果たしましょう。私も全力で治療にあたります。
     

    2014.11.20

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